第9回ポジティブ介護開催御礼(老人ホームに入らなくて済むための生き方)

2016/08/29

2016年8月の市民講座「ポジティブ介護」では、北九州で700件を超える介護施設を取材されている介護ぷらすの山川さんを講師にむかえ「老人ホームに入らなくて済むための生き方」というテーマでお話しいただきました。

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山川さんは老人ホームの紹介業をメインのお仕事としながら、在宅介護サービスをご案内するボランティアもされています。
http://www.kitakyuusyuu-kaigosoudan.com/

また、これまで700件を超える北九州の介護施設への取材をされてきました。
http://ameblo.jp/ikoi-1512/

今回「老人ホームに入らなくて済むための生き方」というテーマについてお話されるのは、高齢者の方と話をしていると、自宅で暮らしたいという意見を持っている方が非常に多いと感じたから。

老人ホームは様々なサービスが提供され快適な生活が送れると思うのですが、それでも住み慣れた自宅で生活を続けたいという方がとても多いそうです。

老人ホームの種類

老人ホームは、ざっくり言うと、13食の食事提供や生活支援、介護・リハビリサービスなどが提供されますが、老人ホームの種類はたくさんあります。

老人ホームを探されている一般の方は、この施設の種類について知らない方がほとんどですが、どの種類の施設がもっとも適しているかを把握しておくことは大切なことです。

施設の種類を把握するためには「介護度」と「自由度」の軸で考えるとわかりやすいと思います。

自由度と介護度による介護施設のセグメント

自由度が高く介護度が低い施設には、住宅型やサービス付き高齢者住宅、高齢者向け優良賃貸などがありますが、介護家族ではなく、施設に入るご本人が選択されるケースが多いです。

自由度が低く介護度が高い施設には、特別養護老人ホームやグループホーム、介護付き高齢者住宅などがあります。

こちらは、認知症などによって本人が施設を選べず、ご家族が施設を選ぶケースが多いです。

ちなみに、ニュースなどでよく耳にする「特別養護老人ホーム」は費用が安いため申込が殺到しており、多くの方が入所を待っている状態(待機)です。

山川さんがご相談者に説明する際には、「自由度が低く介護度が高い施設(右下)」を老人ホームとして説明しています。

「自由度が高く介護度が低い施設(左上)」は「アクティブシニア向け住宅」と呼んでいますが、こういった施設は介護度が高くなれば退所しなければなりません。

逆に、「自由度が低く介護度が高い施設(右下)」は元気になったら退所する必要があります。
(介護保険からの介護報酬で運営されているため、本当に介護が必要な方のみを受け入れる必要があるため。)

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介護が必要になる病気とは?

介護相談を受けている中で、介護が必要になる病気というのが見えてきました。

・脳血管疾患
・認知症
・高齢による衰弱
・骨折・転倒
・関節疾患

の上位5位までが原因で介護が必要になるケースが約7割をしめます。

介護が必要になる病気

さらに、上位2位の脳血管疾患と認知症では、いきなり要介護になってしまう割合が高く、注意が必要です。
介護度は下から要支援12要介護1234→5の順で高くなる。

老人ホームに入るパターンとは

介護者と家族が同居している場合、先ほど説明した老人ホーム(家族が選ぶ施設)に入る状況としては、
・トイレに一人で行けない
・認知症になり問題行動をおこす
など、本人よりも家族が介護の限界を感じるケースが多いようです。

また、別居している場合は(お一人で暮らしている場合)
・発作がある、点灯した
・認知症になり一人の生活が困難(薬の管理、火の元の不始末など)
など、一人で暮らすのが難しくなった場合が多いようです。

また、ご本人が介護サービスを拒否されることで、介護度が高くなり、結局施設に入らざるをえない状態になるケースも見受けられます。

・娘が来てくれるし家事もできるからヘルパーはいらない
・デイサービスなんて幼稚なところ行きたくない
といった話はよく聞きます。

老人ホームに入らないためには?

老人ホームに入るパターンが見えてきたので、この逆のことを目指せば、老人ホームに入らなくてもすむはずです。

1.心身の健康を維持する
病気、特に脳血管疾患、認知症などにならないように気をつけて生活する

2.家族を心配させない、困らせない
在宅の介護サービス(ヘルパー、デイサービスなど)を拒否しない

3.終の棲家は元気なうちに考えておく
家族と同居するのか、アクティブシニア向け住宅に入るのかなど、元気なうちに決めておく

といったことが老人ホームに入らなくて済むポイントだと思っています。

脳梗塞/認知症になりやすいのは・・・

魚より肉が好き、豚骨ラーメンなどこってりした食事が好き、砂糖などを好むAさん
肉より魚、パンよりご飯がすきで野菜をよく食べるBさん

昔から仕事一辺倒で趣味がない、遊ばないしあまり笑わない、近所づきあいが少ないAさん
よく笑う、好奇心旺盛、趣味や生きがいがある、遊びや楽しむことが上手なBさん

どちらが脳梗塞や認知症になりやすいかと聞くと、みなさん迷わず答えることができます。

どうすれば脳梗塞や認知症を防げるかはわかっているはずなのに、発症数は年々多くなっているのです。

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体の健康と心の健康にわけて対策を考える

・体も心も健康な人が気をつけること
 加齢による老化、転倒・骨折に注意

・心は健康だが体が不健康
 脳梗塞、糖尿病、関節疾患など

・体は健康だが心のケアが足りない
 認知症やうつ病など

・体も心もケアが足りない
 脳梗塞の後のうつや認知症の後の糖尿病など

高齢者の心と体の健康

家族図を作ってみる

あなたの介護をしてくれそうな介護サポーターを明確にしておくために、家族を図であらわしてみましょう。

①男性は□、女性は◯で記載しましょう
②あなたを中心に同居家族を線で囲みましょう
③あなたを介護してくれそうな人を上から順に1−3位までランクづけしましょう
④介護をしてくれそうな人はどこに住んでいるかを書きましょう

また、介護してくれそうな人が明確になったら、「介護力」と「資金力」の軸で介護サポーター力をチェックしてみましょう。

ここまでできると、「自分の健康状況」×「介護してくれる人の状況」の組み合わせで対応策がわかります。

本人と家族の状況別の介護

老人ホームに入らなくても

老人ホームに入りたくなくても、元気なうちにやっておけることがあります。

例えば

・元気なうちに一度、老人ホームを見学する
・毎月15万円の費用を払っていけるのかシュミレーションをしておく
・自分で最後の迎え方も真剣に考えておく(日本尊厳死協会など)

また、脳梗塞や認知症を予防するためにおすすめの本もあります

・「脳梗塞・心筋梗塞は予知できる」真島康雄
・「生き方のツケがボケにでる」金子満雄
・「平穏死10の条件」長尾和宏

現状は、1970年台に病院で亡くなる方が自宅で亡くなる方を越え、現在は約8割の方が病院で亡くなっています。

自宅で亡くなる方は1割強しかいないということなので、健康なうちになにかしら対策をしておかないと自宅で最後を迎えることは難しいと思います。

まず脳梗塞や認知症にならないための生活習慣、そして、介護が必要になる前にできる準備をしておくといったことが、老人ホームに入らなくて済むために必要だと思います。

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質疑応答

Q:老後のお金が心配ですが、今から何かしておけることはありますか?

まずは比較的価格が安いケアハウスなどに見学に行って、待機が発生している場合は予約しておくなどが考えられます。さらに介護度が高くなりそうなら、特老などに予約をしておくことも考えてみてください。

また、上手な貯め方とともに、上手な減らし方も考える必要があります。

お金が減るのは心配ですが、上手に使っていくことも考えていただきたいです。

Q:地域のボランティアや行政サービスは、どうやって探せばよいか?

困ったときに民生員さんに助けてもらうというのは難しいと思います。

「与えて、与えてもらう」という考え方を持ち、元気なうちに自分から地域活動に積極的に携わっておくことが重要だと思います。

Q:老人ホーム見学のポイントはありますか?

選ぶ施設によって見るポイントが変わります。

サ高住や住宅型介護施設の場合は、
・どういう自由がきくか
・清潔さ
・スタッフの雰囲気
など、個々人で重視するポイント

また、
・どういう状況になったら退去しなければならないか
・どういう人が入っているか
・日々の生活で何をする必要があるか
などを確認しておくと、入った後にどういった生活がおくれるかわかります。

Q:介護サービス利用を拒否する親にサービスを利用してもらうには?

家族でできることと事業者でできることの違いを説明する

事業者でまかなえることは任せよう。そこでできた時間で、一緒に買物や旅行に行こう、といった話をする。

あくまで見放すわではなく、お互い良い生活をおくれることを伝える。

デイサービスの選び方を間違えている場合
・リハビリ中心のデイサービス
・レスパイト型(家族の介護を軽減する)
・認知症対応型
利用の拒否が激しいのは、認知症の方。そういった方をリハビリ対応型に連れて行ってもマッチしない。

本人の状況に応じて、適切な事業所を選ぶことも必要です。


来月のポジティブ介護は「介護保険のサービスで利用できる福祉用具の賢い使い方」です!

詳しくはこちら >> http://socialup.jp/events/432

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お電話:092-791-9533

TEL:092-791-9533 / FAX:092-523-5261

一般社団法人ソーシャルアップ 担当/井口(いのぐち)